連載 「海の名前」 2024年10月号


〜 ストロマトライト(stromatolite) 〜

「成長する生物の岩」とも呼ばれ、藍藻(シアノバクテリア)類の死骸と泥粒などによって作られる層状の構造をもつ岩石です。地球上で始めて酸素の放出を行った生物の生みの親で、約27億年前に生まれたものです。ストロマトライトは藍藻類と堆積物が何層にも積み重なって形成されるもので、藍藻類が砂や泥の表面に定着し、日中に光合成を行い、夜間の休止期には、泥などの堆積物を粘液で固定するのです。藍藻類は呼吸するために上部へ分裂し、翌日には再び光合成を始め、この繰り返しで、ストロマトライトは徐々にドーム型に成長していくのです。成長速度は非常に遅く、1年に数mm程度しか成長しませんが、断面にある縞模様から、当時の一日の長さが推測できる、とされます。化石の発見は多いですが、現生のものはオーストラリア・シャーク湾のハメリンプールなど、ごくわずかな水域のみでしか発見されていません。

<関連書籍>
「海の名前」(東京書籍刊)中村庸夫:著・写真






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