連載 「海の名前」 2024年7月号


〜 波浪(はろう) 〜

風が海面を吹くときの摩擦で生じる波の「風浪」と、発生した風浪が風のない離れた海域に重なりながら伝わる「うねり」、およびその両者の海岸付近において海底の影響を受けて変形する「磯波」の総称が「波浪」で、水面に起きる表面波の事です。「波浪」は通常、約1秒から約30秒の周期をもっています。静かな海面に風が吹き始めると、最初は表面張力波とよばれるさざ波が生じ、さらに風が吹き続くと、しだいに大きな波が現れるようになります。このように、その海域で吹いている風によって生成された波を「風浪」と呼びます。岸から十分離れた海域で長時間風が吹き続いた場合の波高(波の山から谷までの高さ)は、〔波高(m)〕=0.03×〔風速(m/s)〕2で与えられます。現在のもっとも大きな波高は、1933年アメリカの軍艦ラマポ号が北太平洋で観測した34メートルという値です。風場(風の吹いている海域)を離れて伝わっていく波や、風がやんだのちに残っている波の「うねり」は、やがて沿岸部に到達し、砕波したり、反射の過程で大部分のエネルギーを失って消滅するのです。

<関連書籍>
「海の名前」(東京書籍刊)中村庸夫:著・写真


風浪

うねり

磯波





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