連載 「海の名前」 2023年9月号


〜 アリューシャン列島(Aleutian Islands) 〜

アメリカ合衆国のアラスカ半島からロシアのカムチャツカ半島にかけて約1,930キロメートルにわたって弧状に連なる300以上の有人・無人島からなります。環太平洋火山帯の一部を構成し、大部分がアメリカ合衆国・アラスカ州に属していますが、西端のコマンドルスキー諸島のみがロシアに属します。その昔、アジア大陸からこの列島を伝ってアメリカ大陸に人々が渡った記録もあり、現住する人種的にはモンゴロイドで、アリュートと呼ばれアジア系の顔立ちです。その後、毛皮を求めてロシア人が進出し、アラスカ全土を収めますが、クリミア半島でイギリス軍に敗れた結果、国費に苦しんだロシアが1867年にアメリカに売り渡したのです。値段は720万USドル、面積単価は約2セント/エーカー(1エーカー=約4047平方メートル)でした。リンカーンとジョンソン両大統領の下で国務長官を務めたスワードの決断でこの取引が行われましたが、当時は「巨大な冷蔵庫を買ったスワード」と酷評されました。しかし、豊富な天然資源により、アメリカは大もうけをしたのです。絶滅してしまったステラ―ダイカイギュウの故郷で、トド、キタオットセイ、ラッコ、アホウドリ、ザトウクジラなどさまざまな絶滅危惧種が生息し、コククジラが餌場や繁殖地に移動する途中の重要な通過地です。アッツ島とコマンドルスキー諸島東端のメドヌイ島との間にアメリカ合衆国とロシアの国境線と国際日付変更線があるため、時差は2時間ではなく、22時間となっています。

<関連書籍>
「海の名前」(東京書籍刊)中村庸夫:著・写真


ダッチハーバー、ウナラスカ島

日本時代の鳥居、キスカ島

海岸線に生育する寒冷地植物、アッツ島





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