連載　「海の名前」　2023年8月号

地中海は北と東をユーラシア大陸、南をアフリカ大陸に囲まれた海で、地中海盆地に位置し、面積は約250万平方キロメートル、平均水深は約1500mあります。地中海は大西洋の属海で、さらにエーゲ海、アドリア海など地中海と接続する海が含まれます。ジブラルタル海峡の西側に大西洋が、トルコのダーダネルス海峡を経た北東にマルマラ海と黒海があり、南東はスエズ運河で紅海と結ばれています。接するヨーロッパ、中近東、北アフリカは古代から往来が盛んで、「地中海世界」と総称されました。内海のため、比較的穏やかで、沿岸は複雑な海岸線が多く、良港に恵まれヨーロッパ、アジア、アフリカ、3つの大陸を往来することができ、古代から海上貿易が盛んで、古代ギリシア文明、ローマ帝国などが栄えました。巨大なプレートの衝突によって形成された海であるため、火山が点在し、ヴェスヴィオ山やエトナ山、サントリーニ島など現代に至るまで活発に活動を続ける火山も多く、地震も頻発します。大西洋からの海水の流入と、ナイル川など地中海に流入する河川の水量をあわせても海面からの蒸発量が大幅に上回るため、塩分濃度が高く、大西洋よりも潮位が低くなっており、地中海の表層の海流は軽い低塩分水が東へ向かって流れ、深層海流は重い高塩分水が西へと向かって流れています。

<関連書籍>
「海の名前」（東京書籍刊）中村庸夫：著・写真

ジブラルタル海峡

モナコの入り江

サン・トノラ島、フランス

海の写真のボルボックス　　© 中村庸夫　無断転載を禁止します。