連載 「海の名前」 2023年6月号


〜 インド洋 〜

インド洋(Indian Ocean)は、太平洋、大西洋と並ぶ三大洋の一つで、地球表面の水の約20パーセントが含まれます。北側はインド、パキスタン、バングラデシュ、ミャンマーなどから、西側はアラビア半島及びアフリカ、東はマレー半島、スマトラ島、ジャワ島及びオーストラリア西岸・南岸、南は南極海に囲まれた海洋です。大西洋との境はアフリカ南端のアガラス岬から南に延びる東経20度線、太平洋との境界は東経146度55分線でオーストラリアのタスマニアあたりです。インド洋で最北はペルシャ湾の北緯30度になります。インド洋には最大のマダガスカル島をはじめセイシェル諸島、チャゴス諸島、モルジブ諸島、セイロン島、アンダマン・ニコバル諸島、ココス諸島、クリスマス島など多くの島々があります。巨大熱帯低気圧も発生し、大西洋や太平洋東部のハリケーン、西太平洋の台風に対し、インド洋で発生するものはサイクロンと呼ばれ、ベンガル湾付近で、4月から5月と10月から11月に多く発生します。インド洋から西太平洋の低緯度海域は水温もほぼ同じで繋がっており、共通の生物が多く生息し、「インド太平洋」という言葉が海洋学や海洋生物学の分野でしばしば用いられます。インド洋北部は、モンスーン(季節風)が強く、夏は南西から北東に(東アフリカ方面からアラビア・インド方面に)、冬は北東から南西に風が吹き、季節風の影響を強く受けて、海流も夏は時計回りに、冬は反時計回りに海流が生まれます。時期によって一定の方向の風と海流は帆船の航行に向いており、季節によって方向が変わるので、風向きが変わる季節になると帰ってくることができ、東アフリカ・アラビア・インド間で紀元前からダウ船という三角帆の帆船でインドの香辛料や中国の絹、陶磁器が西へ運ばれ、西の東アフリカからは象牙、犀の角、鼈甲などが、北はヨーロッパやオリエントから来たガラス製品・葡萄酒なども交易され、海上交易路=海のシルクロードができていました。

<関連書籍>
「海の名前」(東京書籍刊)中村庸夫:著・写真


セイシェル諸島の奇岩

ドーニィー、モルジブ

インド洋の固有種・インディアンバタフライフィッシュ





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