連載 「海の名前」 2023年4月号 |
〜 回帰線 〜
地球の回帰線は太陽に対して回転軸の傾きと同じ23度26分の赤道傾斜角です。太陽が地表を照らす角度は季節と時刻によって変化し、いちばん角度が大きい正午ごろの南中高度は、春分と秋分の日で赤道上を鉛直に照らします。そして、北半球の「夏至」には北緯23度26分で、北半球の「冬至」には南緯23度26分の赤道と平行に引かれた線上で鉛直に照らし、北半球のものを北回帰線、南半球のものを南回帰線と呼んでいます。北回帰線が通る場所では、夏至の瞬間に太陽が頭の真上に来ることになり、太陽の下に立っても影が全く見えなくなります。しかし、日本は北回帰線よりも北側にあるため、真上に太陽が来ることはなく、最南端の沖縄にいても影ができてしまいます。台湾島は、北回帰線によって、ほぼ南北に二分されており、回帰線を挟んで島の北側と南側では気候がかなり異なり、熱帯と亜熱帯の境界点になっています。北回帰線は、英語で「the Tropic of Cancer」と呼びます。「Tropic」は回帰線、「Cancer」は星占いに登場する「かに座」のことで、地球から見て、夏至の時期の太陽が、かに座付近にあるため、こう呼ばれています。「回帰」は、「一回りして元の場所に戻る」という意味で、北回帰線を通過した太陽は赤道方面に向かい、南回帰線に達すると、また戻ってくるため、1年周期で太陽が戻ってくることが、「回帰」という言葉の由来となっています。南回帰線は、英語で「the Tropic of Capricorn」と呼び、「Capricorn」は「やぎ座」で、冬至の時期に太陽が、やぎ座の付近にあることから名付けられています。南北2つの回帰線にはさまれた地域は太陽からの輻射熱を強く受けるため気温が高く、熱帯となっています。 |
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