連載 「海の名前」 2023年1月号


〜 大西洋 〜

ヨーロッパ大陸とアフリカ大陸、アメリカ大陸に囲まれた世界第二の海洋です。赤道で南大西洋と北大西洋とに分けて考えると、南大西洋はアフリカ大陸と南アメリカ大陸の分裂によって誕生し、北大西洋は北アメリカ大陸とユーラシア大陸の分裂によって誕生したもので、大西洋を中心とした地図を見ると、両方の大陸が合わさり納得できます。大西洋と太平洋との境界は、南アメリカ大陸最南端のホーン岬と南極大陸を結ぶ線。インド洋との境界は、アフリカ大陸最南端のアグラス岬から南極大陸を結ぶ、東経20度の経線と定められています。南側の南極海との境界は、南緯60度の緯線と定められています。また、北極海とはグリーンランドからスピッツベルゲン諸島、ノルウェーのノールカップ(北岬)を結ぶ線によって分けられています。大西洋の縁海とし、メキシコ湾やカリブ海、東側には地中海、黒海、バルト海、北海などがあります。海底地形を見ると、大西洋の中央に、アイスランドからアゾレス諸島を経て南緯58度まで大西洋のほぼ中央部を南北に約16,000kmにも渡って連なる大西洋中央海嶺(海底山脈)があります。地球全体を巡る海水大循環の起点はグリーンランド近海で、冷やされた海水が北大西洋深層水として沈み込んで大西洋を南下し、太平洋に流れ込んで暖められて表層水となり、インド洋から大西洋に流入し北上して戻ってくるもので、地球の気候を支配しています。プラトンの『ティマイオス』や『クリティアス』の中で記述された伝説の広大な島の帝国で、プラトンの時代の9000年前に海中に没したと記述されている「アトランティス大陸」に因んで「Atlantic Ocean」となりました。アトラスはギリシャ神話に登場する、天を支える巨神の名に由来しますが、ギリシャ神話の神の名前は日本人に馴染みが無いため、和名の大西洋は、「ヨーロッパ大陸の西側にある大きな海」の意味で名付けられました。

<関連書籍>
「海の名前」(東京書籍刊)中村庸夫:著・写真


ホーン岬のあるホーン島、チリ

ピコ島、アゾレス諸島、ポルトガル

アグラス岬、南アフリカ





海の写真のボルボックス  © 中村庸夫 無断転載を禁止します。