連載 「海の名前」 2022年7月号


〜 潟 〜

干潟(英: mudflat)とは、一般的に河川や沿岸流によって運ばれてきた土砂が、水流・波が弱い海岸や河口部、ラグーン(潟湖)に堆積することで形成される低湿地です。潮汐による海水面の上下変動により、時間によって陸地と海面下になることを繰り返す平坦地形で、砂浜と比べ、傾斜が少なく波浪がほとんどなく、勾配が緩やかで、土砂粒径が小さく、生物相が多様です。環境省の定義では「干出幅100m以上、干出面積が1ha以上、移動しやすい基底(砂,礫,砂泥,泥)」を満たしたものを干潟と呼んでいます。干潟は、河川・沿岸流などによる土砂の供給と、波浪・潮流などによる侵食との微妙なバランスの上に成り立つ地形で、バランスが崩れると、乾燥した陸地となるか海面と化すなどして消失します。干潟には、川の上流から流されてきた有機物や栄養塩が堆積しやすく、表面には珪藻など微小藻類が多く、高い栄養価を持っており、これらを食べる貝類、カニ類、泥の中に潜るゴカイ類、それらを餌とする動物が多数生息し、野鳥もそれらを狙って集まり、渡り鳥の中継地としてラムサール条約の登録地が多いです。

<関連書籍>
「海の名前」(東京書籍刊)中村庸夫:著・写真


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