連載 「海の名前」 2022年5月号


〜 サンゴの白化 〜

サンゴはポリプと呼ばれる柔らかい本体と石灰質の骨格で出来ており、骨格は枝状、テーブル状、塊状、葉状などに成長し、それが幾重にも積み重なって、「サンゴ礁」という複雑な「地形」を作り上げます。ポリプには褐虫藻と呼ばれる藻類が共生し、太陽光により光合成を行い、養分を作ってサンゴに供給し、褐虫藻は安全なすみかを手に入れています。サンゴに高水温などのストレスが掛かると、褐虫藻がサンゴの体内から外に出てしまい、サンゴの白い骨格や褐虫藻のいなくなったポリプが白く透けて見えるのが「白化現象」です。白化したサンゴは養分を十分に得ることができなくなりますが、2〜3週間ほどのうちに褐虫藻がサンゴの体内に戻れば回復しますが、褐虫藻が戻らなければ死んでしまいます。水温が大きなストレスとなるため、台風が海水をかき混ぜて水温を下げ、雲が強い日射をさえぎり、サンゴが受けるストレスが和らぎますが、台風が少ない年には広範囲で白化が起こることが考えられます。海水温が高くなってきた主な原因は気候変動による温暖化で、世界的にサンゴの白化は増加傾向にあります。

<関連書籍>
「海の名前」(東京書籍刊)中村庸夫:著・写真


白化サンゴ空撮

白化したトゲサンゴ

死んでくずれたサンゴ





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