連載 「海の名前」 2021年4月号


〜 潮目 〜

海流や潮流、沿岸水などがぶつかり合う潮境(しおざかい)付近の海面に見える、境目を潮目と呼びます。海水は全て同じに見えますが、場所によって「流れの速さ・水温・塩分の密度・棲んでいるプランクトン」などが異なり、「潮目」を境に海の色が異なり、片方だけが波立っているように見えたり、泡立っているように見えたり、筋のようなものが細長く伸びて見えます。このように、水塊や局地的に発生した流れがぶつかり、その時に海面付近に見られる変化が「潮目」です。潮目の下には、流れがぶつかり合った境界面がありますが、それは潮目ではなく「潮境(しおざかい)」と呼ばれます。潮目周辺には、海流のぶつかり合いによって海底の栄養豊富なプランクトンが巻き上げられたり、流れにのってきたプランクトンが潮境に寄せられて停留するため、それらを餌とする小魚や、更にそれを餌とする大型魚が集まりやすくなります。また、流れがぶつかり合うと、酸素が取り込まれて酸素量が増加し魚が活発になるのです。暖流と寒流といった、性質の異なる水塊がぶつかるような大きな場所においては温かい地域に棲む魚と、冷たい地域に棲む魚が混在しますので、色々な種類の魚が集まる良い漁場となります。時に、潮目には流れ藻やごみなど浮遊する様々なものも集まります。

<関連書籍>
「海の名前」(東京書籍刊)中村庸夫:著・写真


海流と沿岸水の潮目

潮目にできた泡

潮目に集まるゴミ





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