連載 「海の名前」 2021年1月号


〜 海岸の奇岩 〜

海岸の岩石の形状には色々面白いものがあり、どうして出来たのだろう?と不思議なものがたくさんあります。宮崎県の青島を中心に、「鬼の洗濯板」と呼ばれる岩があります。新世後期(約700万年前位)に海中で出来た固い砂岩と軟らかい泥岩が繰り返し積み重なった地層が斜めになって隆起し、長い年月に波に洗われ、固い砂岩層が積み重なって見えるようになったもので、青島から南の巾着島までの約8kmの海岸線に見られます。我が国ばかりか、世界中に見られるのが方状節理、柱状節理、材木岩などで、海食を受ける岩石が規則正しい割れ目で貫かれています。一体こんな地形がどうしてできるのだろう、とつくづく不思議になってしまいます。世界的にはタスマニアのポイント・ラオウルやジャイアンツ・コーズウエーなどが有名です。また、ニュージーランドのモエラキには、巨大な丸石が海岸のいたるところに転がっており、今にも転がり出てきそうなものもあります。ひとつの重さは数トン、大きいものでは直径が2mにもなります。マオリの伝説では、巨石は1000年ほど前に沿岸で座礁したカヌーのアライテウル号から岸に打ち寄せられたヒョウタンだとされています。 科学者によると丸石は約6500万年程前に形成された亀甲石の凝固による、と説明されます。真珠ができる過程に似て、核となる荷電した微粒子の周囲に水晶化したカルシウムと炭素物質が徐々に集積し、約400万年の歳月を経てこの丸石が形成されました。 これら丸石を含む軟らかい泥石地層は約1500万年前に海底から隆起し、その後、風や雨、海の浸食作用によって泥石が洗い流され、浸食されない丸石だけが後に残されたので、「モエラキ・ボルダーズ」と呼ばれます。

<関連書籍>
「海の名前」(東京書籍刊)中村庸夫:著・写真


ポイント・ラオウルの柱状節理、タスマニア

モエラキ・ボルダーズ、ニュージーランド

鬼の洗濯板、青島、宮崎





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