連載 「海の名前」 2020年10月号


〜 沖合の波 〜

水深が深い沖合に生じるのが「沖波」で、平らな海面に風が吹き、海水との摩擦が表面張力に打ち勝つと「表面波」が起こります。こうしてできた「風波」のうち、峰幅の短い切れ切れな波は「切れ波」と呼ばれます。波が高くなると、傾斜面に、横から効率的に風が当ってエネルギーが供給されて高くなり「風浪」になり、峰の尖った三角波になります。大小の波が入り交ざると「波瀾」で、風向が変わり波同士が別方向からぶつかり入り乱れ、秩序が無く、湧き立つようにかき乱された海面を「混乱海面」と呼びます。波の高さや波長は、風速、吹送時間、風の吹く吹送距離によって異なり、大きくなった風浪はさらに風が強くなると波頭が崩れて「裂け波」、「砕け波」となり、波頭が崩れ、白く泡立つ「白波」となります。強さやイメージにより「波風」や「荒波」、「風濤(ふうとう)」などとも呼ばれます。風のエネルギー供給がなくなっても、波は発生域の外に伝搬して重なり合い、波長が長くなだらかな「うねり」となり、大きなものが「山波」です。沖合の高波やうねりを「波座(なぐら)」とも呼びます。

<関連書籍>
「海の名前」(東京書籍刊)中村庸夫:著・写真


赤道無風帯

吹走流

切れ波


裂け波

三角波

吹走域を離れたうねり





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