連載 「世界 水族館巡り」 2022年7月号


〜 バンクーバー水族館(Vancouver Aquarium) 〜

バンクーバーの広大なスタンレーパーク内に、投資家やバンクーバー市、BC(ブリテッシュ・コロンビア)州、カナダ政府の支援を受けて、1956年に開館したカナダで最初の水族館です。新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年3月から一時閉鎖され、永久閉鎖も危ぶまれるも、アメリカのテーマパーク運営会社ハーシェンド・ファミリー・エンターテーメントが買収し、2021年8月に待望の再開となりました。カナダで最大規模を誇り、海洋研究、海洋保全、海洋生物の保護を行うと共に、一般にも開放されバンクーバーの主要な観光スポットになっています。1964年に世界で最初にシャチの展示を始めましたが野生生物の保護のために飼育をやめ、更にイルカやクジラ類の飼育反対の世論が高まって裁判にまでなり、公園管理局は同館のイルカ・クジラ類の増数と展示の禁止を決定しました。1頭だけ残っている30代の雌イルカ、ヘレンは2005年に漁網にからまっているところを助けられ、治療とリハビリを受けましたが、ヒレが一部欠損したため自然に帰すことは不可能で、引き渡し先が見つかるまで飼育を続けています。大人気だったベルーガの屋外プールを改装し、「ステラーズ・ベイ」と名付け、バンクーバー島北部の漁村のイメージを演出し、トドの施設として、ガラス窓からトドの姿を間近に眺めることもできるようになりました。地元のジョージア海峡の魚などの展示や、BC州沿岸のチョウザメや深海魚などの生態系を紹介し人気を集めています。また、ラッコ水槽、アマゾンの熱帯雨林の魚や巨大なアナコンダ、ナマケモノにも出会うことができるギャラリーや、カラフルな熱帯魚などを展示する水槽も人気です。ケープペンギンのペンギン・ポイントやタッチプール、世界中のカエル展示や、神秘的なクラゲも見ものです。水族館の関連機関の海洋生物保護センターは病院施設を持ち、ケガをしたり、親を失った海洋生物を保護して治療・リハビリも行っています。

<関連書籍>
「水族館!海の人気ものに会いに行こう」
(アスペクト刊)中村庸夫、武弘:著・写真
「水族館で遊ぶ」(実業之日本社刊)中村庸夫、武弘:著・写真
「水族館に行こう」(平凡社刊)中村庸夫:著・写真
「水族館ウォッチング」(平凡社刊)中村庸夫:著・写真


外観

トド

ミズクラゲ

ラッコ





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