連載 「今月の赤ちゃん」 2019年7月号


〜 キタオットセイ 〜

キタオットセイはアシカ科・キタオットセイ属に分類される鰭脚類で、単にオットセイとも呼ばれます。北太平洋の北部の島々で主に繁殖し、アラスカ西部、ロシア東部の北太平洋、オホーツク海、ベーリング海などに棲息するオットセイで、英語でNorthern fur sealキタオットセイと呼ばれています。全身は細かい下毛で密に被われ、上質な毛皮のため乱獲されて一時は絶滅も危惧されましたが、現在は各国に守られ、全体の数は約 130 万頭と推定されています。5月から10月にかけてベーリング海のプリビロフ諸島やコマンドル諸島、千島列島などで繁殖し、11月から春にかけて三陸沖の親潮と黒潮がぶつかる潮目の餌が多い海域や、千葉県の銚子沖までも南下します。魚やイカなどを食べ、雄は最大体長215cm、体重270Kgほどに成長し、雌はやや小型です。オスは繁殖地に上陸し、5月にハーレムの縄張りを形成し、上陸したメスが6-8月に出産すると、すぐに交尾を行います。出産直後の幼獣は全長66-69センチメートルで、毛衣は黒です。オスの成獣は頸部の体毛が伸長して鬣状になり、毛衣は黒や暗褐色。幼獣やメスの成獣の毛衣は背面が灰色、腹面が赤褐です。ハーレムに接近する別の雄に襲いかかってテリトリーを守ろうと争いが絶えず、雄たちは周囲の事など気にせずに闘うため、産まれたばかりのたくさんの子供が踏み潰されてしまいます。

<関連書籍>
「マーメイドドリーム」(TOTO出版刊)写真、文:中村庸夫
「海獣たちの地球」(誠文堂新光社刊)写真、文:中村庸夫


授乳中のキタオットセイ

キタオットセイのハーレム

キタオットセイの大きな雄と雌





海の写真のボルボックス  © 中村庸夫 無断転載を禁止します。