連載 「今月の赤ちゃん」 2015年8月号


〜 マアナゴ 〜

北海道から南シナ海にかけての沿岸や内湾に棲息する、体長90cm程のウナギ目アナゴ科の魚です。日中は砂泥地に穴を掘って隠れたり岩穴に潜んだりし、夜になると這い出て餌を漁る生態から「穴子」とも書かれますが、正しくは「穴に住む魚」で、「穴魚」です。体側に規則的に白い点が並ぶため昔の竿秤のような事から「秤目(ハカリメ)」とも呼ばれました。夜行性に由来した「夜寝ず」や「米魚(ヨネズ)=女郎魚」、「助平」の反転で「ベエスケ」など様々な地方名があります。江戸前の羽田沖のものが最高級とされ、背中の色が濃く、皮に艶があり、身が白く肉厚でふっくらしたものが高値で取引されます。マアナゴの産卵場は南西諸島周辺とされ、孵化後の幼生は笹の葉のような形をする事から、ギリシャ語で「葉形仔魚」という意味のレプトセファルスと呼ばれます。黒潮に乗って移動し春先に本州沿岸に到達し、変態して親の形になります。稚魚のレプトセファルスを関西では「べらた」、高知などでは地引網にかかると「のったり、それたり」しながら網の中を滑るため「ノレソレ」と呼び、5cm程の透き通った幼魚を三杯酢や椀だねにして食べます。


ノレソレ

マアナゴの成魚

穴にすし詰め状態になる





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