連載 「今月の赤ちゃん」 2014年11月号


〜 オニカマス 〜

南日本を含む太平洋、インド洋、大西洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布し、沿岸から沖合いの表・中層を時に大きな群れを作って泳ぐスズキ目カマス科の魚です。カマス類中最大の魚で、体長は2mにも及びます。体は細長く、体側上半部に不明瞭な横帯があり、頭は尖り下顎は上顎より突出して、鋭い歯を持ち、時にサメよりも危険と恐れられます。南方の大きな個体には毒があるとされ、「ドクママス」の別名もあります。「カマス」の名は穀物や塩などを入れるために、蒲(がま)で作ったむしろの入れ物を「叺(カマス)」と呼び、「カマス」の口が叺のように開いているところから来る、とされます。また、この魚の体つきが機織りをする際、右、左と交互に横糸を通すときに使う道具の梭(ひ)に似ているとのことで、「梭魚(カマス)」や「梭子魚(カマス)」の字も用いられています。この魚の「鬼叺(オニカマス)」は大きくて、いつも見えている鋭い歯を持ち、鬼のような形相から来るものと思われます。ダイバーや釣り師は英名、種小名のbarracudaをそのまま用いて、「バラクーダ」と呼びます。幼魚期は汽水域のマングローブの中にひそみ小魚や甲殻類を捕食しており、茶褐色で体側に黒い斑紋があるその体色は擬態とされています。


オニカマスの成魚

マングローブ林にひそむオニカマスの幼魚

下顎が突出して、鋭い歯を持つ





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