連載 「今月の赤ちゃん」 2014年5月号


〜 イサキ 〜

本州中部以南の暖海の外洋の岩礁域の磯に棲息する、体長40cm程になる魚です。幼魚は濃い3本の縦縞が明瞭で、成長につれて模様が薄れます。紀州では、縞が鮮やかなイサキの幼魚を、縞模様があるイノシシの子供と同じように、「瓜坊(ウリボウ・ウリンボ・ウリンボウ)」などと呼びます。標準和名の「イサキ」は「磯(イソ)魚(キ)」で、磯に棲息する事にちなむとされます。また「斑(イサ)魚(キ)」は体色が灰黒色で、幼魚に縞がある事によるものともされます。「伊佐幾」や「伊佐木」はこうした「イサキ」の呼び名に漢字が当てられたものでしょう。「鶏魚(イサキ)」は「イサキ」は背鰭の棘が、鶏のトサカに似ている事にちなむとの説があり、英名chicken grunt(ニワトリ・イサキ)も同じ発想です。関東では「イサキ」ですが、西日本では「イサギ」と濁ります。5月下旬から8月にかけて各地で産卵し、「麦秋」と呼ばれるその時期が旬になり、「麦わらいさぎ」と呼びます。多くの地方名があり、中でも和歌山の呼び名、「鍛冶屋殺し(カジヤコロシ)」は、昔、この魚を食べた鍛冶屋さんが、喉にその固くて鋭い骨を詰まらせて死んだ、という俗説に由来するとされます。中国や台湾では「三線磯鱸」、「鶏鱸」、「三線鶏魚」、「三線鷄魚」などと記されます。


イサキの成魚

イサキの幼魚

イサキの幼魚の群れ





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