連載 「今月の赤ちゃん」 2013年09月号 |
〜 キュウセン 〜
北海道南部から日本の南部全域、アジア大陸の朝鮮半島から南シナ海にかけての温帯域に広く分布する、体長25cm程度のベラ科の魚です。雌雄で体色と斑紋が異なり、雄は体色が青緑で鮮やかで胸鰭の後方に黒斑があり、雌はやや小型で、体色はわずかに赤味がかり黒い縞模様がはっきりして、雄よりスマートです。このため昔は、雄は「青ベラ」、雌は「赤ベラ」と呼ばれて、別種と考えられていました。メスの一部は、成長するとオスへ性転換し、それに伴って体色も変化します。幼魚は、沿岸浅所の砂底や砂礫底、岩礁の周りや転石の多い砂底に数匹が群れているのを見ることができます。日が暮れると、砂の表面から数センチのところに体を横にして「砂潜り」し、捕食者から防衛して眠ります。また、冬に水温が15℃以下になると、砂に潜って冬眠します。神奈川県三崎地方の呼び名の「九線(キュウセン)」が標準和名に用いられています。地方名や俗名には、砂に潜るため「スナメグリ」、模様から刻(ギザ)のある魚で「ギザミ」、娼婦の意味で「ヨネズ」や「ヤギ」、麦が熟す頃にたくさん獲れるから「ムギウラシ」や、まずくて仏さんでなければ食べてくれないことから「仏の魚(ホトケノウオ)」などもあります。
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キュウセンの幼魚 |
キュウセンの雌 |
キュウセンの雄 |
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