2023年11月のテーマ写真館




 《 東京湾の入り口〜館山〜 》


千葉県館山市は房総半島内房側の南端に位置しており、東京湾の入り口となる街です。市の西側は半島のように突き出した形をしており、先端にある洲崎と対岸の神奈川県三浦市の剱崎を結んだ線より北が東京湾となっています。その洲崎から東に1kmほどの場所には坂田(ばんだ)という町があり、東京湾入り口のダイビングスポットになっています。南から日本列島に沿って流れてくる大きな海流である黒潮は千葉県沖で進路を東に変えて太平洋へと向かって流れていきますが、館山湾はその黒潮を一部受け止める地形をしているのです。熱帯域から運ばれてくるのは暖かい海水だけでなく、海流に乗って南方の生き物の卵や幼体がやってきて沿岸に着くとそこで生活をはじめます。一昔前はそれらの魚は冬に海水温が下がり、越冬できずに死んでしまうことから「死滅回遊魚」と呼ばれ、初夏から秋までダイバーやアクアリストを楽しませてくれる存在でした。(現在では死滅という言葉が良くないという理由で「季節来遊魚」と呼ばれるようになりました)坂田のダイビングポイントでは関東近辺で見られる普通種(その地に根付いた生き物)に加えて、季節来遊魚である亜熱帯性の沖縄などで見られる生き物を楽しむことができます。サンゴ礁はありませんが、館山では昔からサンゴが見られることで有名で、それも黒潮の恩恵と言えるでしょう。

※温暖化の影響が顕著に現れるようになった近年では海水温の上昇により季節来遊魚が越冬するようになり、普通種であった生き物が見られなくなるなどの現象が起きています。冬に海水温が下がることで育つワカメなどの海藻も減少しており「さまざまな種類の生き物が見られるようになった」と喜んでだけいられるような状況ではないかもしれません。

コブダイ

ツノダシ

ダンゴウオ幼魚


アオサハギ幼魚

ミノカサゴ

セミホウボウ


クロダイ

ワカシ(ブリ)

キビナゴ


カゴカキダイ

ゴンズイ玉

ユウゼンは八丈島と小笠原のみで見られ、館山にやってくることがある


アカオビハナダイ幼魚

クロユリハゼ幼魚

ナガサキスズメダイ幼魚


ウミウシカクレエビとニシキウミウシ

ウツボをクリーニングするベンテンコモンエビ

オトヒメエビ


イセエビ

サンゴガニ

ヒメイカ


ワモンダコ

マダコ

ヒョウモンダコ


フタスジリュウキュウスズメダイ幼魚

ヤギの仲間

ワカメ


ウミエラ

ウミサボテン

ウミトサカ


 ◆ 海の一言 :『カメ』


カメ(亀)は、爬虫綱・カメ目に分類され、約2億1000万年前(中生代三畳紀後期)に出現し、身を守るため甲羅を本格的に発達させた生物です。カメは1億年の間に淡水域・陸上・海域に適応する系統に分岐し、海洋のカメはオールのような足鰭を持ち、淡水ガメは鋭い爪の間に水かきを持ち、陸ガメは水かきを持ちません。腹面、背面、側面は甲羅で閉鎖され、前の窓から頭部と前足、後ろ側の窓から後ろ足と尾が出るようになっています。このように四肢・頭部が肋骨に囲まれているのは現生爬虫類中ではカメ類だけです。現生の最大種は海洋性のオサガメで最大甲長189cmになり、絶滅種には甲長2.2m、体重2tonにも達したと推定される海洋性のアーケロンがいました。カメ類は細胞の代謝のサイクルが遅く、動物の中でも長寿の代表格とされ、確実な長寿記録として1766年にセーシェルからモーリシャスに持ち込まれ、1918年に死亡したアルダブラゾウガメの152年の飼育記録があるそうです。食物や水を与えないで最長で2年も生存することがあり、昔は保存食として用いられました。日本で「鶴は千年、亀は万年」と言われ、長寿や、夫婦円満の象徴とされます。西欧文明では、『イソップ寓話』中の「ウサギとカメ」が有名で、亀は鈍重で一見無能と思われながら、歩みは遅くとも着実に真っ直ぐ進む、いわゆる「勤勉さ」の象徴として描かれています。

アオウミガメ

ガラパゴスゾウガメ

アーケロンの化石のレプリカ




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