2019年2月のテーマ写真館




 《 変わったベラの仲間 》


スズキ目・ベラ科の魚は日本近海に130種類がいる、とされます。魚の多くは仲間ごとに「鯛型」、「鮭型」、「チョウチョウウオ型」、「カレイ型」のように共通する体形があります。しかし、ベラの仲間に共通する体形はあまり無く、生息域、食性、繁殖形態・・・などにより、体形や生態が大きく異なります。ベラ科で最大で、体長2mにも達するメガネモチノウオの雄は、頭がナポレオンの帽子のような形に見えるところから「ナポレオンフィッシュ」と呼ばれます。コブダイもベラ科の魚で、雄は体長1mを超え、頭に大きなコブを持つ特異な体型です。ホンソメワケベラは他の魚などの口の中を掃除する体長12cm程の小さく細長い魚です。クギベラはサンゴの枝の間などに潜む甲殻類を食べるため口が非常に細長い特異な体型です。イラは体高が高く薄い体をしています。キュウセンは昼間は岩礁で過ごしますが、夜は砂に潜って眠る魚です。危険を感じると瞬時に砂に潜るテンスの仲間もいます。オビテンスモドキ、カンムリベラ、ツユベラ、スミツキベラ、ヒオドシベラ・・・などベラの仲間の多くの種類が幼魚時代から成長につれて色彩、模様、形を変え変身します。また、雄と雌で体型や色が異なるものも数多くいます。

<関連書籍>
「魚の名前」(東京書籍刊)中村庸夫:著・写真

ギチベラ雌

メガネモチノウオ

セナスジベラ


コブダイ

ウニを食べるヒレグロベラ

シチセンベラ


ヤシャベラ

ツユベラの幼魚

スミツキベラの幼魚


ヒオドシベラの幼魚

砂から出てくるキュウセンの雌

オビテンスモドキの幼魚


クギベラの雄

クエの口を掃除するホンソメワケベラ

カンムリベラの雄


ノドグロベラの雌

イラ

キツネダイ


 ◆ 海の一言 :『性転換』


人間の場合、外科手術によって性転換する特殊な例もあるようですが、魚の世界には雌雄両方の機能を備えた種類が300種ほど知られています。そして繁殖戦略として、クマノミの仲間の場合は、生まれた時は全て雄で、同じイソギンチャクに棲む集団の中で一番大きい個体が雌に性転換し、2番目に大い雄とペアーを組み、繁殖します。逆にコブダイは生まれた時は全て雌で、栄養状態の良い雌が巨大化し、周囲の雌と争い、勝った雌が雄に性転換して繁殖活動を行います。ハタ科の魚の中には同時的に雄雌同体の種もおり、同じ個体が卵巣と精巣をもち産卵と同時に自家受精で繁殖するものもいるそうです。こうした性転換は厳しい自然界の中で、生息環境に合わせて効率よく強く、大きな子孫を残すためにできた繁殖システムだとされています。

性転換中のサクラダイ

ハマクマノミ大が雌、小が雄

メガネモチノウオの雌




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