2014年11月のテーマ写真館




 《 世界有数の魚種を誇る海、四国・柏島 》


四国の西南端、宿毛湾の南から九州・日向灘に突き出た大月半島の先端に位置する周囲4km程の小さな島が柏島です。接近して流れる黒潮と、豊後水道を通過して瀬戸内海と行き来する潮流がぶつかる境目に浮かび、水温や水質、海中環境の多様性などから、珍種、稀種を含む魚種が豊富なことで知られます。黒潮に乗って南方から流れ着く熱帯、亜熱帯の魚類や、温帯種が混生する海で、わが国有数の魚種数を誇ります。黒潮に洗われる浅い海域には多種多様なイシサンゴ類やソフトコーラル類が群生し沖縄のようにカラフルな熱帯の魚たちが群れ、和歌山や伊豆で見られるような温帯の魚が混在して泳ぐ、そんな不思議な海が柏島です。1996年に行われた高知大学海洋センターの調査では、143科884種もの魚類が確認され、その後発見された未記載の新種、日本初記録種を含め、約1000種もの魚類の生息が確認されています。世界的に豊かな海とされる日本近海では約3500種の魚が確認されており、その約1/3が柏島周辺で見られるのです。ヨーロッパ海域の全魚種が約250種ということを考えると、わが国と柏島の特異な立地条件、海洋環境に基づく豊かな魚類相を物語ります。黒潮の影響で水温は16〜29℃と温かく、豊後水道方面から運ばれる栄養分が豊富な海水に育まれ、半島先端の島、という変化に富んだ環境の特異性から、多種多様な温帯と亜熱帯の両方の魚や生物を育まれる、と考えられています。


ハナヒゲウツボ

カシワハナダイ=柏島で発見されたためこの名前になった

ツノダシ


ピグミーシーホース

キンギョハナダイ

アケボノハゼ


ネッタイミノカサゴ

ホタテツノハゼ

ニシキウミウシ


イシダタミヤドカリ

オトヒメエビ

モンハナシャコ


クマドリカエルアンコウ

クビアカハゼ

キハッソク


クマノミ

イシヨウジ

ハダカハオコゼ


 ◆ 海の一言 :『黒潮』


日本列島の南岸を流れる黒潮は、メキシコ湾流や南極環流と並ぶ世界最大規模の海流で、日本海流とも呼ばれます。透明度が高く、海水が澄む反面、栄養が貧しく、プランクトンの生息数が少なく、海色は澄んだ青黒色に見えるのが黒潮名の由来となっています。赤道の北側を西向きに流れる北赤道海流が起源で、太平洋を渡ってフィリピン諸島の東から北に向い、その流れが地球の自転によるコリオリの力の影響で強くなり、台湾と石垣島の間を抜けて東シナ海に入り、沖縄、奄美の西側を北上し、鹿児島県のトカラ海峡から太平洋に戻り、日本列島の南岸に沿って流れます。そして房総半島沖から東に向かい、太平洋の中部に向かって流れる海流です。東シナ海で一部が枝分かれして対馬海峡を通って日本海に流入する流れは対馬海流と呼ばれます。黒潮の幅は、日本近海では100km程度で、最大流速は4ノット(約7.4km/h)にもなり、水深600〜700mでも1〜2ノットになることも珍しくありません。流量の概算は一秒間に2,000万〜5,000万立方メートルとされています。表層(200m以浅)の海水温は夏季で30℃近く、冬季でも20℃近くで、高塩分で溶存酸素量は5ml/l前後で、栄養塩濃度は親潮系水に比べて1桁も少ないそうです。黒潮が流れ続けるエネルギーは偏西風と貿易風が年間を通して定常的に吹くために、北太平洋の中緯度海域を時計回りに海水の流れが生まれています。各地に多くの地方名がり、紀州以西では「上り潮(のぼりしお)」、西日本の漁民に使われた「真潮(ましお)」、「本潮(ほんじお)」、東北地方の「桔梗水(ききようみず)」、「上紺水(じょうこんすい)」、宮崎の「日の本潮(ひのもとしお)」、などと呼ばれました。

黒潮の色合い

ヒラソウダ、沖縄県与那国島

シイラ、沖縄県与那国島




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