2013年05月のテーマ写真館




 《 魚のひげ 》


人間の男の人のひげは飾り物や、偉そうに威張るため、あるいは汚らしい無精ひげで、あまり役に立ちません。イヌやネコなどでは口を中心にまばらな毛が発達し、それが鋭敏な触覚器となり障害物を感じたり、餌を探すのに役立つ洞毛と呼ばれます。魚のひげの場合も、軸肉強食の水の中で生き抜くために必要で、長い進化の過程で皮膚や鱗などが変化してできたもののようです。頭部近くに生える毛状や細長い突起物をヒゲということが多く、ナマズ、ドジョウ、ライギョなどは感覚器として役立っており、オジサンやヒメジの仲間のヒゲは感覚器であると共に、砂などを掘り返して餌を探す道具でもあります。魚の場合、味を感じる器官の味蕾は、舌ばかりでなく、口の中や唇はもちろん、顔、ヒゲ、そして鰭や皮膚でも味を感じられ、魚の多くは、全身で味見ができるそうです。

関連書籍:「魚の名前」(東京書籍刊)中村庸夫・著
「水中の擬態」(平凡社刊)中村庸夫・著
「海の生き物百景」(宝島社刊)中村庸夫・著

ハナヒゲウツボ

ヒゲダイ

オニカサゴ


ボロカサゴ

オジサン

海底掘るをモンツキアカヒメジ


ヒゲハギ

ゴンズイ

ヒゲツノザメ


トクビレ

キアンコウ

クモハダオオセ


ケムシカジカ

ドジョウ

ハナミノカサゴ


ナマズ

トランスルーセントグラスキャットフィッシュ

タイガーシャベルノーズキャットフィッシュ


 ◆ 海の一言 :『ハナヒゲウツボ』


ハナヒゲウツボは、ウナギ目・ウツボ科の魚で、英語では「ひげ」ではなく、「Ribbon eel 、Ribbon moray」で、「リボンウナギ、リボンウツボ」です。漢字では「鼻髭?、花髭?」などがあり「髭」と書かれますが、いわゆるひげではなく、鼻孔の肉質突起が管状に伸び、その先端が花びら状に開くところから「ハナヒゲウツボ」となったものです。このリボン状のひげを疑似餌として振って小魚を誘い、捉えて食べてしまうのです。成長と共に体色が変化し、雄性先熟の性転換を行う魚で、幼魚や未成熟魚では体色は黒色で、成魚になるとメタリックブルーの鮮やかな青色で、鼻先から背鰭が黄色の雄になります。さらに成長すると体の大部分が黄色の雌となるのです。以前は成魚と幼魚は色が全く異なる所から別種だと思われていました。

ハナヒゲウツボの幼魚

ハナヒゲウツボの雄

ハナヒゲウツボの雌



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