2010年10月のテーマ写真館




 《 海の中の兎(うさぎ) 》


来年の干支は兎ですが、海の中にも実は兎に関係する生物がいます。まず、魚の兎相嘗(ウサギアイナメ)です。カサゴ目・アイナメ科・アイナメ属の魚で、北海道〜日本海北部、オホーツク海、ベーリング海の浅海から、やや深めの岩礁に棲息する全長 80cm近くになる魚です。名前の由来は、日本の魚類学の草分けの田中茂穂博士が学名の種小名 lagocephalus のギリシャ語で「野ウサギの頭」という意味からウサギアイナメと呼んだものです。また、貝の仲間でウミウサギガイがおり、ウミウサギ科の貝のグループにはトラフケボリ、キヌヅツミ、シロオビコダマウサギ、テンロクケボリ、トラフケボリなどが多くいます。外国語名では、魚のアイゴ類が英語で、Rabbitfish(ラビットフィッシュ)で、口が小さく、草食性で、顔がウサギに似るところからこのように呼ばれます。アイゴの仲間はスズキ目・アイゴ科の魚で、西太平洋〜インド洋の暖海域に棲息する沿岸性の海水魚で、鰭の棘に毒をもちますが美味で食用とされ、沖縄のアイゴの子供の塩漬けにしたスクガラスが知られます。


ウサギアイナメ

ウサギアイナメ

ウサギアイナメ


ウミウサギガイ

外套膜を張るウミウサギガイ

外套膜を張ったウミウサギガイ


アイゴ

ゴマアイゴ

ハナアイゴ


 ◆ 海の一言 :『宝貝(タカラガイ)』


宝貝(タカラガイ)の仲間は世界に230種ほど、日本近海に88種で、日本の固有種はリュウキュウダカラ1種です。英語で cowryや cowrieと呼ばれタカラガイ科の巻貝の総称でウミウサギガイ科の貝も含められます。貝殻は丸みを帯びて光沢があり、陶磁器のような質感があります。古くは貝殻を通貨として利用したり、女性、繁栄、生誕、富などの象徴とされ、装身具やお守り、儀式などに用いられました。縄文時代の遺跡から装身具が出土し、沖縄諸島の祝女が首にかけて宗教的な意味を持つ呪物として用いたほか、『竹取物語』にも珍宝「燕の子安貝」として登場し、漢字の「貝」はタカラガイに由来する象形文字とされます。

ホシダカラガイ

タルダカラガイ

キイロダカラガイ



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