2009年10月のテーマ写真館




 《 海から見た地球温暖化 》


経済を優先し、既に起こっている温暖化問題の解決を先送りしたり放置すれば、気象が更に変化し、生態系が破壊され、多くの動植物が絶滅し将来における人間の生存さえ危ぶまれるであろう、と多くの科学者が指摘しています。
潟{ルボックスが、長年に渡る取材を通して見つめてきた海も、温暖化の影響で確実に変化し、海の生物たちに影響が及んできています。
南極やグリーンランドの氷床や氷河の融解による海面の上昇ばかりか、シベリアの永久凍土の融解により地中に閉じこめられていた有機物が分解し、二酸化炭素の300倍と言われる強い温暖化ガスのメタンガス放出が始まっているとされます。
北極海の氷の減少はシロクマがアザラシを獲れなくなるだけではなく、太陽光の熱を反射する白い氷が減少し、暗い海面によるより多くの太陽熱の吸収が行われ、温暖化を加速する悪循環が始まってしまったのです。
今生きている私たちは何とか耐えしのぐことが出来るかもしれません。しかし、子供から孫、そして更に次の世代が地球上で安全に暮らしていけるかどうかは疑問視されているのです。


崩れ落ちるアラスカのハッバード氷河

崩れ落ちるアラスカのハッバード氷河

この20年間で10km以上後退したコロンビア氷河


沖の氷が張らずアザラシ狩に出られないシロクマ

タテゴトアザラシの子供が育つ前に氷が解け始める

海水温度の上昇が低気圧を発生させる


海面が上昇し道路まで覆うベネチア

海面上昇の影響で今は消滅してしまったピサモエ島

海面上昇が問題になっているキリバス共和国


水温の上昇で白化した沖縄のサンゴ

海中の白い部分が白化したサンゴ(屋久島)

冬になると死んでしまう死滅回遊魚も冬が越せるようになりつつある(三浦半島)


 ◆ 海の一言 :『ベネチア(ベニス)沈没』


5世紀頃、沿岸地方の住民が北の蛮族の侵略から海に逃れ、干潟に杭を打ち水鳥の巣のような家を建て、製塩や漁業で暮らすようになったのがベネチアの始まりとされます。名前は、ケルト人の一部族ヴェネティ族Venetiに由来し、商才にたけた人々は、塩の交易で富を蓄え、本土から離れたラグーン内の砂州を繋ぎ、干潟を埋め立て、護岸で囲い、運河を作り、太鼓橋で結んだ人工島を作って拡大したのです。
海抜は1メートルにも満たず、冬から春先にかけて起る「アクア・アルタ (acqua alta)」と呼ばれる高潮で、しばしば浸水被害に見舞われ、近年は温暖化による海水面上昇により、サンマルコ広場や建物の床にまで冠水する被害が増え、ベネチアがあと20年沈まずに存在する保証は無いとされます。



海の写真のボルボックス  © 中村庸夫 無断転載を禁止します。