2008年10月のテーマ写真館




 《 船のSL 外輪蒸気船(Paddle Steamers) 》


今からおよそ200年前、イギリスに始まった産業革命で生み出された蒸気機関。これを利用してアメリカ人のフルトンが、石炭を炊いて蒸気を発生させ、その力でエンジンを動かし、大きな水車を回して船を推進させる、世界初の外輪蒸気船、クラーモント号を建造したのです。1807年にハドソン川に就航させ、ニュー・ヨークと五大湖を結び、それによってニュー・ヨークの隆盛が始まりました。蒸気船は風の力に頼る帆船に対し、風が無くても自由に動く船として大活躍し、やがて大西洋も横断して確固たる地位を築いたのです。 ヨーロッパの外輪蒸気船は船の横に水車を二つ取り付けた、サイド・ホイールの外輪船が多く、多少の波があっても影響なく走れるものです。
これに対して、アメリカで広まった外輪船は、ミシシッピー河など底が浅い川に就航したため、船底を平にして、船尾に水車を一つ取り付けたものでした。ミシシッピー川の外輪式蒸気船を見ながら育ったマーク・トゥエインは「トムソーヤの冒険」など、外輪蒸気船の登場する小説を書いたのです。
外輪蒸気船は蒸気オルガンの音を奏でながら、現在も世界各地で現役として活躍しているのです。








 ◆ 海の一言 :『黒船』


幕末、我が国に鎖国をやめ、開港するように迫るために来航した黒船も外輪蒸気船でした。当時はまだ蒸気機関の燃費が悪く、太平洋を横断するのに必要な分の石炭を積むと、余りに重たくて沈んでしまうため、帆も供え、風のあるときは帆走していました。また、性能の悪い蒸気機関は真っ黒なすすを吐き出し、船を汚したため「黒船」となったものです。



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